これだけは知っておきたい、遺産相続ガイド

HOME >遺産相続の謎と疑問 > 愛人の遺産相続

愛人の遺産相続

愛人であっても、遺言状がある場合には、相続権がある、こともあります。といっても、配偶者や子供がいる場合、仮に「愛人に全財産を譲る」という遺言を残したとしても、法定相続人の権利である遺留分を侵すことはできません。また、愛人の全てが遺言さえあれば相続できるというわけでもなく、公序良俗に反する関係にあった場合には相続することができません。具体的に言えば、夫が職場で不倫関係に陥り、一緒に財産を築いてきた妻子に財産を譲りたいといっても、ほとんどの場合無理という事になります。  愛人という言葉の定義には様々な認識が存在することになるかもしれませんが、内縁関係とは異なり、生計を共にはしていない場合を指すことがほとんどです。むしろ、「愛人」は配偶者の権利を侵しているものとして、法的には配偶者よりも弱い立場にあります。配偶者に訴えられて、慰謝料を請求されることも少なくはありません。不倫が公序良俗に反する行為である以上、法的に愛人を保護するわけがないのです。
 とはいえ、愛人ではなく、子供であれば話は別です。愛人当人には遺贈であってもその相続が認められないことも多いのですが、愛人の子供も配偶者の子供と同様、第一順位の相続権があります。きちんと認知していれば、その子供は非嫡出子として、嫡出子の2分の1の遺産を相続することが出来ます。嫡出子が優遇されることについては、子供に罪はないのだから違憲であるという考え方もありますが、現在の法律ではそうなっています。非嫡出子を養子縁組することで、嫡出子にすることも出来ますが、この場合基本的には配偶者の同意がなければ無効になります。まれに、愛人に遺産を相続させる目的で、愛人を養子縁組するような場合もありますが、もちろん配偶者がその事実を知ってから半年以内に養子縁組の取り消しを請求することが出来ます。被相続人が亡くなってからの戸籍確認で、愛人が養子になっていると知ってからでも十分取り消し請求は間に合いますので、配偶者が愛人に相続を認めなければこの方法はまず無理だと考えましょう。
 被相続人に配偶者がいない場合は、前回紹介した通り、内縁関係として扱われ、特別縁故者になれる可能性もあります。ですが愛人となると、確実に自分の死後、遺産を渡す事は難しいと考えましょう。ですから、愛人に対しては、若干の贈与税を支払う必要がある程度の贈与を、生前贈与の形で数年に渡って、譲っていくのが最も確実です。あえて贈与税を支払う形にするのは、愛人が勝手に財産を使いこんだり、勝手に預貯金などの名義変更を行ったりしたのでは、と訴えられないようにする対策です。ただし、もちろんこの場合も配偶者などの遺留分を侵しての贈与は、配偶者が愛人に自分の相続分を請求出来ますから、遺留分を侵さないことも、なるべく安全に愛人に遺産を渡すためのコツになります。

↑ PAGE TOP